麹づくりは酒造りにとって、もっとも重要で神経をつかう工程です。麹がうまく仕上がらなければ「コク」のあるお酒は造れません。麹は蒸米のデンプンをブドウ糖に分解する糖化酵素をはじめ、液化酵素、プロテアーゼなど数多くの酵素をつくり出します。まさに、酵素の宝庫です。これらすべての酵素の力を十分に引き出すことが、おいしい酒造りにつながるのです。
麹の成長に合わせた手入れと温度管理
麹は生きていますから、その成長は一直線には進みません。微妙な温度管理と麹の発育にあわせたきめ細かな手入れがまる二日間、昼夜を分かたず続けられます。麹づくりは、専門の技術をもつ代司(だいし)が担当します。代司は香り、手触り、味で、麹の微妙な変化を感じとります。麹菌が蒸米の芯まで繁殖するように、水分をうまく調整しながら、麹室全体の温度管理はもちろん、麹のひと粒、ひと粒が、それぞれ均一な温度になるように手入れをし、発育にムラが生じないよう心を配ります。福光屋では、伝統的な「蓋麹法」と新しい技術を加えた独自の手法で、より自然に麹を育てています。