お酒の80%は水ですから、水質が直接お酒の味に関わることはもちろん、麹菌や酵母にも影響を与えます。では、酒造りに適した水とはどんな水なのでしょうか。ひと言でいえば、鉄分が少なく、麹菌や酵母の成長を助けるカルシウムやマグネシウムなどの無機塩類を適度に含んでいることが条件です。
名水をつくる金沢の地層
福光屋の水系をたどると、「大桑層」という貝殻の非常に多い地層に行きつきます。これは太古の昔、金沢が海の底にあった頃に形成されたものです。犀川の源流地に端を発する伏流水がこの「大桑層」をくぐり抜ける間に、鉄分がとり除かれ、カルシウム、マグネシウムなどが溶け込んで、素晴しい自然水に成長していきます。このキリッとした水の味わいが福光屋の味わいをつくるバックグラウンドなのです。
福光屋の水が百歳であるということは、金沢大学理学部が行った調査によって判明されました。水の年齢は、簡単にいうと、水に含まれる放射能の量を調べることでわかるそうです。放射能といってもトリチウムという自然界に存在しているものです。調査によると、地球上がまだ環境汚染されていなかった一世紀前に降った雨が、百年の時をかけて地中を流れ、いま福光屋の蔵に湧き出ているということなのです。
蔵のある小立野台・石引は古くから名水が湧き出る地として知られていますが、この恵みの百年水こそ、福光屋が創業以来、石引から一歩も動かない理由なのです。