薬や医療的な治療だけでなく、腸内環境や栄養状態などの内面からのアプローチで「ホリスティック=トータル」な健康と美容を提唱する皮膚科医・山﨑まいこ先生。
肌のコンディションは、食事や睡眠などの生活習慣の結果。肌自らの力を育て、高めることは体調やメンタルを整えることにもつながります。健やかな肌のための基本のキを伺いました。
山﨑まいこ Maiko Yamasaki
まいこ ホリスティック スキン クリニック 院長。皮膚科医。
滋賀医大卒業後勤務医として形成外科医、皮膚科医、美容皮膚科医として務め、2017年東京・代官山にクリニックを開業。ホリスティックな視点から、外側の治療だけでなく、身体の内側、腸内の健康、心のあり方までサポートし、真の健康と美しさを追求している。オーダーメイドで患者に寄り添う医療には定評があり、各界著名人やビューティー関係者からの信頼も厚い。さまざまなアイテムの揃うECサイト「まいこホリスティックオンライン」の監修も務める。近著に「美しい肌が生まれるところ」(ワニブックス)がある。
まいこホリスティック スキンクリニック
東京都 渋谷区代官山町8-6 アイディ代官山2F TEL:03‐6712‐7015
https://mhs-cl.com
#1. 健やかな肌の条件は、水分と油分が保たれ、みずみずしさと透明感があること
皮膚科医の視点でみると、肌の色や加齢だけが課題ではありません。年齢を問わず、健康的な素肌は、水分と油分のバランスが良好であること。その結果として、みずみずしさや透明感が生まれます。日々のスキンケアと並行してまずは生活習慣を改善し、できるだけ長く維持することで肌の健やかさが保たれます。一般的に、年齢とともに油分が足りなくなることが多く、女性ホルモンのエストロゲンが減ることから肌の水分量を保つ力も弱まります。ですので、年齢に応じて日々のお手入れの質を高めていくことが大切です。
#2. アミノ酸のチカラを体の内側・外側から
アミノ酸はたんぱく質合成に欠かせない非常に大切なもの。大豆製品や良質な肉、魚をはじめ、発酵食品などを摂取することで細胞を活性化する働きがあります。また、年齢を重ねた方は食事の量が減ること、動物性たんぱく質の摂取量が減ることでアミノ酸を体内に取り込む量が減ります。バランスのよい食事、発酵から生み出された代謝物や生成物を摂取してアミノ酸を補う食生活に意識を向けることも大切です。また、アミノ酸をベースにした化粧品を直接肌に塗布することも非常に有効で、身体の内側、外側からの両アプローチが理想ですね。アミノ酸は肌のうるおい、ハリに深く関わる成分であるため、たるみやシワなど、年齢を感じさせる肌のケアにもおすすめです。
#3. いい眠りと深い呼吸が肌を健やかにする
質のよい睡眠と適度なリラックスは肌を健やかにする近道です。多くの人にとって必要な睡眠時間は成人でも7〜8時間程度といわれています。とくに入眠からの1時間半は、スマホの光や音は遠ざけて眠りに集中できる環境をつくりましょう。ショートスリーパーという言葉もありますが、遺伝的に短時間睡眠で問題のない人は実は少なく、アドレナリン分泌などによる興奮状態が続いていることがほとんどです。日中は忙しさに追われて呼吸も浅くなり、交感神経優位の状態が続きます。交感神経が高まっている状態が続くと、肌にもストレスホルモンの影響があらわれ、かゆみが強くなったり、肌荒れがなかなか改善しない、メラニンの排出が弱くなる、修復力が低下したり代謝が落ちることなどにもつながります。15〜30分ほどの昼寝や、脳を休ませることを意識して1〜2分でも深呼吸をするのもよいでしょう。リラックスすると全身の血の巡りがよくなり、肌のくすみの改善にも。呼吸法もスキンケアの一つです。
#4. 化学合成物質は常在菌のバランスを崩すことも
すべての“天然成分=肌によい”ということでは決してありませんが、界面活性剤や防腐剤などの合成の化粧品成分は、肌の免疫バランスを崩すことがあります。肌の常在菌によって保たれる免疫機能が一度破壊されると、免疫の暴走を起こし、いろいろなものに過剰な反応をしてしまう可能性も。常在菌は肌本来の修復力、免疫力を保つことにも関わっているので、その力を大切に守り、育む必要があります。化粧品成分の見極めとともに肌の栄養状態が足りているか、腸内環境が乱れていないかなど、身体の内側からのケアにも着目したいですね。
#5.日光は肌の敵でも味方でもある!
肌のエイジングの最大の原因は紫外線と乾燥です。紫外線は肌のバリア機能を破壊し、シミやシワ、たるみをつくります。これを「光老化」といいます。バリア機能が破壊された肌は過敏になりやすく、さまざまな肌トラブルの要因に。ですが、日光を浴びることも肌と健康には非常に重要です。睡眠時間をしっかりとり、朝日を浴びることでメラトニンが分泌され、体内時計が整うだけでなく、うつ病を防いだり、ビタミンDが生成されることにも着目したいですね。メラトニンやビタミンDは肌の健やかさや肌免疫の向上にも関わっていますので、季節や緯度にもよりますが、1日30分程度は日光に当たるといいといわれています。ただし、紫外線による肌へのダメージも生じるため、真夏の直射日光は避けたり、日陰で長めに外に出るなどの工夫をしてみましょう。