酒造歴29年。大学の先輩である板谷杜氏(現在)に誘われて入社試験を受ける。製麹担当を11年、そのうち最後の4年間は責任者を務めて醪(もろみ)を管理する醗酵室の担当に。2012年に板谷杜氏が杜氏になった際に頭に就任。頭と醪責任者を兼務し、2021年からは頭を務めながら、酒蔵全体の仕事を俯瞰し、サポートする立場になる。今期は自身30年目の酒造りとなる。酒造技能士1級。
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【令和3年の酒造りと推薦酒・頭編】定番酒、高級酒それぞれの味を守り高めて、蔵全体の前進に
福光屋の醸造蔵・壽蔵の№2であり、杜氏の右腕として20代前半の若手から50代のベテラン蔵人を一つにまとめる重要な役を担う頭(かしら)。板谷和彦の杜氏就任と同時に頭に抜擢されて10年目。今期は自身30年目の酒造りとなる古原正健に今期にかける思いを聞きました。
◎頭の仕事を詳しく取材した記事はこちら
【頭とは】
杜氏や蔵人が日々の仕事に最大の力を発揮できるよう、スケジュール管理、設備の保守、資材の準備と調達、原料管理、蔵人の育成、衛生管理、予算管理など、酒蔵内のありとあらゆることを整える重要な役割を担う。
【令和3酒造年度に向けて】
「こんなにも難しい造りをどうやって実現できるだろう?」と、思うほど斬新で、高度な技術が求められる初めての酒質の仕込みが今年もあります。毎年このような厳しく、貴重な経験ができるのは、蔵人として非常に幸せなことと感じる一方で、考えただけでも今から緊張します。細心の注意と万端の準備で挑みたいと思います。また、若手の育成にさらに注力するつもりです。20代の酒造技能士を1人でも多く誕生させるために、実地と座学のサポートを続け、蔵全体のレベルアップにつなげていきたいと、気持ちを新たにしています。
【「頭」として薦める日本酒】
大変な手間がかかる純米大吟醸の中でも、手仕事の粋を集めて仕上げた特別なお酒です。壽蔵全員が力を合わせ、心意気を一つにして仕上げた福光屋だからこそ醸すことができるものです。また、別の見方をすれば、この「瑞秀」の仕込みによって伝統技術の継承、チームの団結力が高まることも事実で、そういった意味でも非常に重要な存在のお酒ともいえます。純米大吟醸らしい華やかな吟醸香の奥にナッツを思わせるコクのある香り、フレッシュな酸味と甘さが楽しめます。ふくらみのある軽やかな余韻もこのお酒の特長です。
福光屋のレギュラー酒の中で一番の“顔”になる純米酒。長年飲み続けている方々を裏切ることは絶対にできないとの思いで、しっかり丁寧に仕込み、旨さを引き出しているお酒です。最もリーズナブルなお酒の仕込みをこれだけ大切にしていることは、福光屋の誇りでもあり、推薦したくなるお酒の筆頭でもあります。懐の深い味わい、ふくよかさがあって和食全般、すべての家庭料理に合うと思っています。これからも毎晩の食卓にいつもある…そんなお酒であって欲しい、そうあり続けるための精一杯の仕事をしていきたいと思っています。