【令和3年の酒造りと推薦酒・酛屋編】山廃酛の進化を確かな形に、味わいに | こめから.jp | お米のチカラで豊かに、上質に。

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2021.12.21.

【令和3年の酒造りと推薦酒・酛屋編】山廃酛の進化を確かな形に、味わいに

酒造りの要所を表す「一麹、二酛、三造り」という言葉。「麹=製麹」と「造り=醗酵」の中間にあり、酒の土台となるのが「酛=酒母造り」です。酛とは、蒸米、米麹、水を合わせた液体の中で乳酸の力を借りながら健全な酵母を大量に増やした液体のこと。醗酵のスターターとして非常に重要な存在で、健全な酛無くして現代の日本酒の醸造は成り立ちません。酛造りの責任者には、速醸酛や山廃酛を細かく造り分けるための技術だけでなく、最新の醸造研究に精通した科学者としての知識や視点も必要になります。酛屋の三上敏夫に話しを聞きました。

【プロフィール】三上敏夫

酒造歴29年。コンクリートやワックスなどの化学工業製品の製造を学んでいたが、「醸造」という人間が関わって成り立つ自然現象、化学の力で解明しきれない世界に魅力を感じて入社。洗米担当、酛担当の助手を経て責任者へ。香り成分の研究をはじめ、蔵付き乳酸菌、酵母の採取・同定・単独培養の研究にも取り組む。酒造技能士1級、清酒専門評価者。

【酛屋とは】
清酒酵母を培養し、酒の元となる酛=酒母を育て、管理する責任者。杜氏の酒質設計に従って最適な酛を造り、醪の工程にバトンを渡す。数百種ある自社酵母を保管する酵母バンクの管理も行う。福光屋では杜氏とともに、化学、生物学、醸造学、統計学を元にした裏付けや分析を担うテクニカル部門でもある。ここ数年は蔵付き酵母、乳酸菌の採取や分析、培養にも取り組み、それらを使った酛造りも行っている。

【令和3酒造年度に向けて】
清酒専門評価者として日本酒の新しい価値の創造を目指します。例えば、乳酸菌はこれまで清酒を腐らせる原因の一つとして邪魔者扱いされてきました。ですが、本来は乳酸菌と酒造りの関係は平安〜室町時代に確立された菩提酛のように古い歴史があります。乳酸菌が生酛系酒母にどのように関与するのか、乳酸菌でしか得られない味わい、香りを構築し、彼らに光を照らしたいという気持ちです。頭の中に思い描いていること、温めていることをできるだけ実地的に表現して、福光屋の山廃酛を進化させることに注力します。

【「酛屋」として薦める日本酒】

加賀鳶 山廃純米吟醸 金沢限定

毎年進化させてきた山廃仕込みの最新作。培養に成功した蔵付き乳酸菌を使用し、自社酵母で醸した初めてのお酒です。やわらかで甘く清々しい吟醸香とまろやかな口当たり、山廃仕込みらしいコクが楽しめます。もちろんこの商品が山廃酒の最終形ではなく、まだ進化の途中であることを楽しみにしていただけると嬉しいです。

金沢限定商品のため、福光屋公式オンラインショップでは、販売しておりません。

黒帯 堂々 山廃純米

福光屋の山廃仕込み純米酒のスタンダードといえる1本。山田錦の洗練された旨味と金紋錦特有のほろ苦さの掛け合わせに、山廃仕込み特有の複雑で軽やかな香りと味わいが一つにまとまっています。さらに、2年間の熟成という大きな要素も加わって立体的な膨らみが楽しめます。