上出惠悟氏のアートラベル3作目「酒歳時記 夏やすみ」が発売。 | こめから.jp | お米のチカラで豊かに、上質に。

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2021.6.4.

上出惠悟氏のアートラベル3作目「酒歳時記 夏やすみ」が発売。

福光屋が発売する日本酒のなかで唯一、年4回の蔵出しごとにラベルが変わる「福正宗 酒歳時記」シリーズ。1986年の発売以来、35年間にわたりイラストレーターや画家を描き手に迎え、四季の風物が描かれる個性豊かなアートラベルが人気を集めています。

2021年の「福正宗 酒歳時記 吟醸新酒」(発売は2020年11月19日)からは、アーティストであり九谷焼窯元上出長右衛門窯の6代目である上出惠悟さんを起用。2月24日発売の春吟醸を経て、第3作目の「夏やすみ」が登場します。

 

生き物、自然への温かな眼差しに溢れた小さなアート
上出惠悟氏は生き物への気持ちが強い。自身のInstagramには愛犬との散歩中に目にした小さな草花や枯れ枝、鳥、昆虫、空の雲、田んぼの水面など、日常の中の生き物、自然への親愛に溢れています。

そんな上出さんが手がける「福正宗 酒歳時記」シリーズは、過去2作とも動物がモチーフ。1作目は干支にちなんで赤牛と梅、2作目は春の野山で戯れる熊の親子が描かれています。3作目となる「福正宗 酒歳時記 夏やすみ 爽涼微発泡 2021」には、水草の中で楽しそうに遊ぶ若鮎たちが描かれました。

 

「春のお酒のために熊の親子を描きながら、夏は魚にしたいなと思って温めていたアイデアです。魚は魚でも、魚釣りを楽しむ人側の目線にはなれなくて。どうしても釣られる側の魚のほうに感情移入してしまうんです。冷たい水の気持ちよさとか、水草の茂みの中で友だちの魚と水草の中でのびのび遊んでいるときの楽しさとか…魚にとっての“夏やすみ”はこんな感じだろうなと思って」と、上出さん。

嬉しくてたまらないという鮎の姿、笑顔、揺れる水草に気泡と、夏を満喫する魚たちがのびやかに描かれています。ボトル上部、ラベル内に書かれた涼やかなタッチの文字からも、夏の愉快さが伝わってくるようです。

 

筒描きで描くことの面白さ、クリエーターにとっての発見
上出さんがこの酒歳時記シリーズのラベル画をどのように制作するかというと、原画は、和紙に下絵をスケッチした後、染色技法の一つである筒描きを用いています。糊伏せしてマスキングをし、九谷五彩を彷彿とさせる顔料で彩色。最後に糊を洗い流すという工程。

絵の具やペン、鉛筆で描くだけでなく、あえて糊を使うことで得られる表現の可能性を追求しながら、形を決め過ぎず自分の手から生まれるものを大切にしたといいます。

「筒描きは染色ですので、普通に絵を描くよりいくつか工程が増えます。例えばこれを染めの工房で行う場合、原画を描く人、型紙を彫る人、染める人という風にそれぞれ専門家がいて、工程が進むにつれてバトンを渡すように、次の人へと仕事を託していきます。僕はプロの染色家ではありませんし、このプロセスを楽しみながら一人で進めます。つまり仕事を受け取る次の人も僕な訳です。そうすると全体感で仕事を捉えようとするので、必ずしも工程毎に完璧を求めようとせず、何か課題があっても先の自分に託すといいますか、先送りするのはあまり褒められた話ではないかもしれませんが、未来の自分がなんとかするだろうと、そういう気持ちになります。自分への甘えもありますし、挑戦でもある気がします」。

さらに、この魚たちの絵を描いているときに、一つの発見があったとも。
「型染の第一人者である芹沢銈介氏が、染の仕事の理想として、工程毎に素材の性質というものに絵を任せ、どこかの工程だけが突出することなく、全ての美しさだけが染め上がりに残るのだという趣旨の言葉を残されていて、初めて読んだ時はなんとなく分かった気になっていたけど、改めてとても深い言葉だと感じました。これは一人で仕事をする人、工房や分業の中で仕事をする人、それぞれの仕事の捉え方や態度の違いかもしれません。家業である九谷焼に置き換えると上出長右衛門窯は後者の方ですが、調和のとれた美しさを皆で作る難しさを感じています。つい誰か一人が頑張ったり、誰かに頼ったりしてしまう。程よい力の入れ方、それから素材を掴むセンスや楽しむことが大切なのかなと今は思います。焼き物と筒描きによるラベルのデザイン、違う仕事のようでいて色々試させてもらっています」。

 

ラベルの楽しさ、雰囲気とリンクしたお酒の味わい
お酒の銘「福正宗 酒歳時記 夏やすみ 爽涼微発泡」からイメージを膨らませ、愛らしく、ユーモラスに描かれたアートラベル。若鮎や水草の楽しくリズミカルな調子、“夏やすみ”の文字の軽やかさは、ボトル内のお酒をそのまま表したかのようです。

今年の「福正宗 酒歳時記 夏やすみ 爽涼微発泡」は、甘く、ぱっと明るい印象の吟醸香にさらさらとした軽い飲み口。甘味のある旨味、清涼感のあるキレと心地よい発泡感を楽しめる仕上がりです。造りを工夫し、昨年よりフレッシュで果実を思わせるみずみずしさがたっぷり引き出されています。よく冷やし、小ぶりのワイングラスでゆっくりお楽しみください。

白身魚やタコ、サーモンのカルパッチョ、サラダ、トマトソースの冷たいパスタ、冷奴、豚しゃぶ、棒々鶏にもよく合います。

福正宗 酒歳時記 爽涼微発泡 夏やすみ 2021

酒米の最高峰「山田錦」のみを使用した純米大吟醸に炭酸ガスを封じ込めた、 夏季限定の生酒です。軽快な味わいと爽快なのどごし、華やかな香りが特長です。 食中酒としてはもちろんのこと、食前酒としてもおすすめです。 甘さと酸味のバランスが良く、しっかりした味わいと、炭酸ガスの効果で口当たりよく飲み進めることができます。

上出惠悟(上出瓷藝)

1981年石川県能美市生まれ。2006年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。合同会社上出瓷藝代表。1879年創業の九谷焼・上出長右衛門窯の後継者として、窯のクリエイティブディレクションを務め、「笛吹」シリーズや「窯まつり」開催など、精力的な幅広い活動と柔軟な発想で九谷焼を現代に伝える。近年は、完成を制御し得ない点が窯の仕事に相通じるとして、染色技法「筒描き」や、九谷焼がルーツとなるデザイン手法にも取り組んでいる。福光屋では2009年に初の企画展を開催。
www.kamide-shigei.com