酒蔵だより
SAKAGURA
壽蔵の酒造三昧――酒蔵の名も無き仕事2【出麹枯らし】
一つの酒を仕上げる工程に「枯らし」という仕事が何度も登場します。枯らしとは、状態を定着させたり、休ませたり、進行を止めるために一定の時間、意図的に放置することの総称です。精米、製麹、酛立てなどの主要な工程が終わるたびに枯らしという間が設けられます。「しっかり枯らして」、「軽く枯らして」と杜氏から指示があれば、蔵人たちはその場面場面で求められた意味を的確に理解して最適の枯らしの状態にしなければなりません。当然ながら、時間の長短に限ったことではありませんから、複雑で感覚的な共通認識の上で成り立つ職人仕事の最たるものかもしれません。
純米大吟醸のための麹造りにも、この枯らしが登場します。2昼夜、48時間をかけて室の中で育てた麹をさらに丸1日をかけて枯らします。麹の枯らし作業の目的は、麹を素早く冷却・乾燥させ、麹菌の発育を止めて馴じませること。この「出麹枯らし」を経てようやく麹が完成するため、製麹の仕上げとしてとても重要な作業で、蔵人たちは素早く無駄なく、適確な手入れを行う必要があります。
写真は、出麹枯らしの仕事を教える麹担当者と若手蔵人。麹の表面積を増やすために、素早く筋をつける方法を指導しながら、共に同じものを見て、触れ、感じながら数値では説明しきれない感覚的な良し悪しの基準を教えようとしています。枯らしという短い言葉に集約される仕事には、酒造りの、壽蔵の不文のこだわりが詰まっています。