「我ら、酒蔵の一員」を心に刻む。福光屋の社員蔵入り研修が伝えること。 | こめから.jp | お米のチカラで豊かに、上質に。

酒蔵だより

SAKAGURA

2019.12.5.

「我ら、酒蔵の一員」を心に刻む。福光屋の社員蔵入り研修が伝えること。

創業1625年の福光屋は、“お米を醗酵させる会社”であることを掲げ、日本酒をはじめ米醗酵技術を応用した化粧品や健康食品を製造販売する金沢で最も長い歴史をもつ酒蔵です。直営店は東京に4店舗、金沢に2店舗、オンラインショップ部門や海外輸出部門も構え、100名を超える社員がそれぞれの業務を担っています。そんな福光屋には、老舗ならではの社員教育制度があります。すべての社員は入社後、醸造蔵の壽蔵で必ず厳しい研修を受けるというもの。化粧品のPR担当であっても、パッケージデザインを行うデザイナーであっても男女問わず、朝7時過ぎから作業着を着て蒸し米を担ぎ、櫂入れを行い、酒粕を運び、高温湿の麹室にも入ります。当然、蔵人のような働きはできませんが、それでもこの研修が重要な意味をもち、毎年続けられる目的はただ一つ。福光屋のすべての仕事は、“酒造りから始まっている”ことを社員全員が頭と体と心で知るためです。研修を行う杜氏や蔵人は、未来を担う社員が福光屋の日本酒や米醗酵の技術にいっそうの関心と愛情をもてるよう毎年研修の内容を工夫し、研修を受ける新入社員も幾度と得られない機会と心得て真剣に励みます。
かつての酒蔵は、酒造期になると蔵人らが酒蔵の一角で寝食をともにしながら酒造りのいろはを若手に伝承し、気構えや規律を教えるのが慣習でした。時代は下り、日本酒醸造の分野もさまざまな機器の導入や道具の改良、科学的根拠を元にした効率化が図られ、酒造りにまつわる環境は大きく変わりました。蔵人全員が寝泊まりをすることもなくなりましたが、福光屋の酒造りは微生物の活動に人間が時間や仕込みペースを合わせる“微生物主義”だからこその労働形態と、蔵人たちの細やかな感性と職人的チームワークによる手仕事の連続であることに違いはありません。
「私たち蔵人は、積極的に自分たちの仕事の根幹を正しく伝え、理解してもらうことに務めなくてはなりません。酒造りの概要や工程はもちろん、壽蔵の中で体験してもらう福光屋のこだわりや情熱、新しい取り組みの一つ一つが、社員を通してさまざまなかたちでお客さまに伝わると考えるからです。とても重要なことです」と、杜氏の板谷和彦。
福光屋の社員一人一人が、自らの仕事の出発点を深く理解し、思いを共有することは、お客さまに喜ばれるものづくりの原点。お酒や化粧品、醗酵食品や機能性食品のもとにある基本姿勢です。そして社員教育の枠を超えて、金沢の文化と感性、さらには日本の食を守り支えることにもつながっていると考えています。

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