酒造りの神・大神神社への参拝と志るしの杉玉 | こめから.jp | お米のチカラで豊かに、上質に。

酒蔵だより

SAKAGURA

2018.11.22.

酒造りの神・大神神社への参拝と志るしの杉玉

毎年11月14日、この大神神社でとり行われる醸造安全祈願祭(酒まつり)。各地の醸造関係者が全国から集まり、お酒の神様の前にうち揃って今期の酒造りの無事を祈祷する祭礼です。古式に則り、宮司祝詞奏上、神楽奏上、巫女による「うま酒みわの舞」が奉納された後、代表の酒造家が玉串を奉納。福光屋からは、蔵元と杜氏をはじめ主要関係者が毎年参拝し、今年はことに平成最後の酒造りの無事を祈るとともに、新時代への挑戦のご加護をお祈りしてきました。拝殿祈祷の後、参列した酒造関係者全員が境内を参進し、杜氏の始祖神・高橋活日を祀る摂社「活日(いくひ)神社」を参拝。酒造りの平穏無事、旨酒の醸造が叶うことを重ねて祈祷するのが恒例です。

さて、この日の象徴ともいえるのが拝殿入口の天井に掲げられた直径150㎝、重さ約250㎏の大杉玉。全国の蔵元から献納された銘酒がずらりと並び、樽酒の美酒が振る舞われる境内の盛況とともに醸造安全祈願祭の風物詩でもあります。青々と鮮やかな大杉玉は、大神神社の御神体である三輪山の神杉の葉を幾重にも放射状に重ねて刈り込み、数日がかりでつくられたもの。木札に書かれた「三輪明神 志るしの杉玉」は、酒造りの神・大物主大神が鎮まる神の山の杉をいただいたことの証です。その大杉玉の小型版ともいえる、直径50㎝ほどの真新しい杉玉が醸造安全祈願祭でお祓いを受けた後、福光屋にも届けられました。蔵人らによって昨年の杉玉から新しい杉玉へと掛け替え作業が行われ、酒造りの神が宿るシンボルとして、来年の同時期まで壽蔵の玄関に掲げられます。

科学と技術の発展によって醗酵の神秘が次々に解明される現代。純米蔵・福光屋は、麹と酵母による微生物主義、自然界の摂理に従った酒造りを信条としています。受け継がれた伝統の技を進化させながらも、ある種、人智の及ばぬ世界に結果を委ねた酒造りでもあるのです。祭礼と風習を尊び、自然現象を深く敬う。清々しく謙虚な気持ちで酒造りに邁進するため、初心に返るための参拝でもあるのです。