ITAYA――杜氏とソムリエのコラボレーションで誕生。日本酒の新ジャンル | こめから.jp | お米のチカラで豊かに、上質に。

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2018.7.6.

ITAYA――杜氏とソムリエのコラボレーションで誕生。日本酒の新ジャンル

今、日本酒の世界がおもしろい。食の多様化や飲み手の嗜好の変化を受け、従来の日本酒にはなかった新たな味わいやスタイルが次々に誕生しています。石川県内に36ある酒蔵の中で、最も長い歴史をもつ福光屋が今年2月に発売した「ITAYA」シリーズもその一つ。シニアソムリエの辻健一氏と福光屋の板谷和彦杜氏、異色の2人が共同開発した斬新な味わいと提案が注目を集めています。開発経緯と狙いをお聞きした対談を、ウェブマガジンでご紹介します。

「日本酒のタブーに、あえて挑んだ造りと味わい」

板谷 2月に発売された「ITAYA」シリーズは、従来の日本酒とは一線を画す味わいです。福光屋が20年以上前から構想し、シニアソムリエの辻さんと共に現代の食のシーンを分析して評価や提案をいただいてようやく実現しました。
 これまでの日本酒のイメージをくつがえす、「酸味」がとても印象的ですね。
板谷 酸味を際立たせることは、日本酒のタブーへの挑戦でした。酸味は、腐造(火落ち)に通じる味なんですね。ですから従来の酒造りでは、どちらかというと酸味より米の旨味に重点をおいてきたわけです。
 ワインでは、酸味こそ味わいの最も大切な要素です。
板谷 「日本酒の心地よい酸味」をどう表現するか、が大きな課題でした。幸いにも福光屋は1985年頃から自社酵母の開発にいち早く取り組んでいました。その中から爽快な酸を生成する独自の「FA酵母」を採用し、リンゴ酸やクエン酸による爽やかな酸味を引き出し、純米蔵の技術を駆使して仕上げました。
 アルコール度数を従来の日本酒より低めに設定したのも時代のニーズをとらえた挑戦ですね。
板谷 一般的な日本酒のアルコール度数は15~19度。ITAYAは13度と低アルコールを目指しました。
 ワインのアルコール度数は、だいたい11~13度ですからITAYAは一般的なワインのアルコール度数と同じということになります。
板谷 それがITAYAの大きな特長の一つです。例えば、夕食で料理に合わせて、従来の度数の日本酒を何種類か飲むとする。すると食後のデザートに行きつく頃には、すっかり酔っぱらってしまう。気持ちよくお酒と食事を楽しむのなら、ほろ酔いがちょうどいいと思いますね。

「ITAYAは、多様な料理とのペアリングが可能です」

 ワインが支持される理由はその辺りにもありますね。今、「料理に合わせる」とおっしゃいましたが、ITAYAはまさに、 「ペアリングのための日本酒」と呼びたくなるお酒です。ペアリングとは、料理と飲み物を上手に組み合わせて互いのよいところを引き立て、より美味しく味わうこと。ITAYAの軽快な酸味は、あえて和食以外の料理とのペアリングを試したくなります。例えば、ZEDはイタリア料理の軽い食事にとてもよく合います。トマトソースのパスタを合わせたらもう最高ですよ。
板谷 食生活が非常に多様化して、純粋な和食はむしろ少ない。お昼にパスタを食べて、夜は気軽な中華を食べることもある。家庭の普段の食事でも、そういう傾向が強いですから。
 当然、お肉や乳製品、オイルなど油分の強いもの、ハーブや香辛料を使う料理も多くなります。こういった料理とお酒を楽しむには、口の中をさっとリフレッシュさせ、次のひと口をもっと美味しく感じさせる効果のお酒が合うわけです。
板谷 そのようなアドバイスをいただいてITAYAシリーズ全4種の味を構成していきました。メインディッシュに合わせるRICE WINE(お米のワイン)と名づけた2種があります。
 RICE WINEはペアリングの観点から、カテゴリを提案しました。for WHITE FOODSは、魚介や鶏肉、クリーム系の白い食材を使った繊細な調味の料理に。for RED FOODSは鮪や鰹、牛肉などの赤い食材を使った濃厚な味わいの料理に合わせるとよいですね。グラスの形状による香りや味の変化、美味しく飲める温度帯も明快にし、ワインのように楽しめることを積極的にお伝えしたかったのです。

技術革新による「生詰常温流通」を実現

板谷 ITAYAにはもうひとつ、福光屋として大きな挑戦がありました。「生詰の常温流通」です。瓶詰時に火入れをしない生詰酒は、これまで冷蔵輸送・冷蔵保管が必須で、「常温」は非常に高いハードルでした。
 ビールもワインも以前から生詰の常温流通が確立されていますが、日本酒に限っては、難しいそうですね。
板谷 今現在も全国の酒蔵で二社しか実現できていないのが実情です。しかも、従来の日本酒と比べて4度ほど低いアルコール度数ですから、いかに無菌充填ができるか、社を挙げての取り組みでした。生詰の柔らかな口当たりと香りを得ながら、どなたにも扱いやすい商品であることは、福光屋の社是の一つ「望まれる味わいの追求」にも通じます。
 私のワインスクールに通う、ソムリエの方々にもITAYAは大変好評です。日本酒というジャンルから飛躍した楽しさをわかってくださっています。
板谷 ありがとうございます。石川、金沢は、食に対して非常に高い見識と鋭い感性をお持ちの方が多く、まさに地元に鍛えられて歩んだ393年の酒造りです。
新しいタイプの日本酒が、そのような皆さまの傍らにあり、日々の食事をより美味しく、新しく感じていただけたら幸せです。

板谷和彦/いたやかずひこ

1969年金沢市生まれ。大学で土壌肥料学を学び、1990年福光屋に入社。2012年より福光屋・壽蔵杜氏に就任し、現在16名の蔵人を率いる。社訓「伝統は革新の連続なり」の精神で、受け継がれた酒造りの技を進化させながら、新しい味わいを日々創造する。趣味はフライフィッシング、写真。

辻健一/つじけんいち

1970年金沢市生まれ。シニアソムリエ。日本ソムリエ協会北陸支部長。「ワインバー シャトー シノン」オーナー、「ワインスクール ル・サロン・ド・シノン」主宰、北國新聞文化センター講師。福光屋とは2011年からペアリングイベントや講座を共催。「ITAYA」シリーズでは、コンセプトワークや官能評価、ペアリング監修を担う。趣味はマラソン、能楽 葛野流 大鼓。

辻健一氏による日本酒と料理のペアリング解説動画を、Youtubeで公開しています

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ITAYAシリーズ全種の飲み比べセット

多彩な料理との心地よいペアリングを目指し、酵母の開発から醗酵・製法、生詰に至るまで、純米蔵・福光屋独自の技術を追求した「ITAYA」。それぞれにタイプの異なるITAYAシリーズ4種を、飲み比べをお楽しみいただけるようお得なセット価格でお届けいたします。香りや味わい、お食事とのペアリングを是非、お試しください。

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