福光屋が長期熟成酒の研究を開始したのは1959年(昭和34年)のこと。高度経済成長期が幕を開け、大量生産による質より量の酒が主流となり、日本酒の賞味価値を1年とする新酒礼讃の時代に、福光屋十二代当主・福光博(ひろむ)は、日本酒の多様な価値と可能性を見出そうと数十年先の仕上がりを見通した最良の酒米の選定や、熟成に最も相応しい醸造法、貯蔵と熟成のノウハウを確立するために、幾多の試作に深い情熱を注ぎました。
1961年(昭和36年)には、熟成専用の禄蔵(みどりぐら)を新設。貯蔵温度の緻密な研究も本格化し、これらの熟成酒と技術は、現社長の十三代当主・松太郎(まつたろう)に受け継がれて今に至ります。
福光屋の宝ともいえる長期熟成酒の中で最古の1970年醸造の純米酒が、50年の節目を迎えました。昭和、平成、令和の三つの時代を歩み、唯一無二の風格をそなえた味わいを、半世紀の歳月を大観する浪漫とともにお愉しみいただきたく、一部を取り分け、720mL瓶100本をお申し込み制にて販売いたします。
そして、この熟成酒が100年を迎える2070年に向け、時間の恩恵を享受しながら研究を深めていきます。